UA
「FINE FEATHERS MAKE FINE BIRDS」

「SUN」
を中心に(07/08/16)


 UAという歌手。まあ、この人はとにかく、特異なセンスと計り知れない才能を持っています。R&B、ロック、ジャズ、レゲエ、民謡なんかを独自の感覚で融合させ、ハスキーで独特な歌いまわしです。
 音楽のみならずファッションも奇抜で典型的な芸術家タイプの人です。

 最初にライブ盤「FINE FEATHERS MAKE FINE BIRDS 」を聴き、「AMETORA」(98年)、「11」(96年)、「SUN」(2004年)と四枚聴きました。
 ライブ盤は1997年の発売です。つまり、ライブ盤は、95年デビューなので割と初期なのですが、そのステージでの実力は大したものです。
 メジャーデビューの前の詳しい経歴は知りませんが、ライブハウスやコンサートをかなりこなしていたのだろうと想像できます。

 一つ、断っておきたいのは、「実力」と言うのは、決して歌手としての技術的なことだけではないということです。つまり自分の表現したいものを、どれだけ聴き手に伝えられるか? という事です。
 はっきり言って、UAは、雰囲気で聞かせるタイプでしょう。もちろん音程もさほど悪い訳ではないし、声もちゃんと出ているし…、ただ「上手い」と言ったら、他にも沢山いるので…。
 彼女の独特な歌い回し、いや、音楽のみならず、動きや表情、ファッション全てでUAの世界と言えるのでしょう。
 それらも含めて、表現する力、ということで「ミュージシャンとしての実力」といえるだと思います。
 また、関西人なので、ライブのMCも関西弁で、軟体動物(?)のような歌い回しと、マッチしていて楽しめますね。
 そして、それらが、照明やステージ装置ではなく、彼女自身から生まれてくるものであることが素晴らしいです。
 
 ライブ盤の中で個人的に気に入ったのは「電話をするよ」と「SOMEBODY TO LOVE」(ジャニス・ジョップリンのカバー)の2曲です。
 「電話をするよ」は、珍しく彼女の作詞ではなくホフ・ディランの渡辺慎の作詞作曲です。男の気持ちを歌った内容ですが、バイオリンの音色と、ある意味中性的ともいえる彼女の歌声がぴったりと合っています。
 「SOMEBODY TO LOVE」は、ジャニスのカバー(実は、ジャニスもカバーなのですが…彼女と歌が一番有名ですので…)を色んな歌手がしている中でも、かなり良いです。どちらかと言うと、軟体動物のような歌い方のイメージなのに、こういう曲でも聞かせます。
 バックも良くて、バンドに恵まれなかったジャニスに、こんなバックで歌わせたかったと思ってしまいました。
 
 もちろん、他の曲もいいです。リズムの強い「太陽手に月は心の両手に」「MAMA」、ミディアムテンポの「雲がちぎれる時」、「リズム」、「HORIZON」、スローテンポの「水色」「ゼリー」「温度」どれをとっても、彼女の独自の世界が表現され、「情熱」は文句なく歌も演奏もカッコイイ。
 ほんとに、この曲を始めて聴いた時は衝撃でした。いつか、日本にもこんな歌手が出てくるだろうと思ってましたけど、いざ目の前に登場すると「おお!」と声がでましたし、初めて聴いてから随分時間が経ちましたが、今でもカッコイイと感じさます。

 そして、このライブ盤で、歌手としての実力を文句なしに聞かせてくれます。よく、CDで聴くのと、ライブやテレビでの演奏が全然違う時があります。音響技術の進歩のせいで、大して上手くもないのに、上手く聞こえる。
 ライブに行ったりライブ盤を聴くとがっかりする、と言うのはよくありますが、UAは違いますね。
 私は、特に自分の曲より、何曲かやっているカバーを聞いてそれを感じました。どの曲も単なるカバーではなく、ちゃんと自分の中で消化して、自分なりの歌い方をしています。

 「11」(96年)というアルバムでは、色んなミュージシャンを招いて、それまでとは違ったアレンジでの演奏を試みています。
 このアルバムの試みは、彼女の好奇心の表れなのでしょう。
 ファッションなども含めて言えることですが、彼女の独自な世界を描く原動力の一つは、その好奇心でしょう。

 人間は食い気と色気がなくなったらお終いだ、と私は思ってるのですが、ミュージシャンだけでなく、いわゆる芸術家、アーティストと呼ばれている人達は、その好奇心も大切な力だと思います。
 2000年にブランキー・ジェット・シティーのギタリスト浅井健一などとAJICOというバンドを組んだりもしています。個性派の横綱格とも言える二人の組み合わせは意表をつかれました。
 そして、その組み合わせに挑戦した二人の心境はどうなんだろう?と思った時、互いに魅かれるものがあったのは言うまでもないですが、それは二人の好奇心の強さの表れとも言えるのだろうと思いました。
 正直、ぶつかり合って、何も出来なかった…なんてことも想像しましたが、アルバムも出したし、ライブもやりました。

 余談ですが、AJICOでのライブシーン(ネット上で見ました)でとても色っぽい腰の動きにゾクゾクしちゃいました。
 ヒェー〜〜!スゲー色気!…それも、エッチしたくなるとか、情欲をかもし出すって言うのと違う、ダイレクトに股間をズキズキ直撃する…理屈無しの本能的な部分を刺激してくる…

 さらに映画にも主演として出演した経験もあったり、ベジタリアンだとか、個性派ながら、ライブのトークなどを聴くと、関西弁のせいもあってか、飄々とした口調で、意外と親しみやすい人物像を持っています。

 「AMETORA」(98年)というアルバムの中では、ちょっとエスニック風な雰囲気とジャズ風(ほとんどジヤズそのものという曲もあった)を試みていましたが、2004年に出した「SUN」は、曲によって何種類もの邦楽楽器やらアジアの民族楽器なども使われていて、色彩感覚豊かなアルバムです。
 簡単に言うと色んな民族楽器も使ってますが、フリージャズがベースです。演奏もほとんどジャズ・ミュージシャンです。どう見ても(聴いても)一般受けしそうもなく売れそうもない曲ばかりですが、私は面白く聞きました。
 メロディーもリズムもはっきりしていない曲を、これだけしっかり歌ってしまうのは、凄いと思いました。

 私もかなり以前にギターでフリージャズの真似事のような演奏をしていた時期がありました。楽器同士なら音を出せば、なんとなく演奏になるものですが、それがボーカルとなると中々難しいと思います。
 恐らく、この演奏には随分即興が入っているように感じます。歌は楽譜があるのでしょうが、これまた楽器の即興に合わせて即興もあったのではないかと思います。

 ブルース、R&Bのように決まったスタイルがあっての上での即興と違って、予想のつかない音との即興は聴くほうは面白いですが、やってる方は難しいと思います。
 それでも、バックが和音を弾いていないことが多く、歌は音をとりにくいと思うのですが、何の不安も無く歌っています。
 そんな演奏を、きっとUAはそれを楽しんでいたのではないかと思います。

 このアルバムは、はっきり言って、聴いていて心地良くなる、元気が貰えた、なんてタイプとは違いますが、何か面白いぞ、次はどんな音が聞こえてくるのか?と、そういう楽しみのあるアルバムですね。
 そして、こんなアルバムは彼女にしかやれないのだろうと思うと、売れなくても、いつかまたこんなアバンギャルドな音楽を聞かせて欲しいなと思います。

 彼女の曲、歌詞は、ほとんど彼女自身が書いています。その歌詞もファッションや歌と同様に独特な世界で、内容は若い女性の心理が基本ですが、比喩が特にユニークです。
 「赤の涙」「生ぬるい貴方を私は吐き出そう」「三日月が夜を産んで」「夕闇の吐息」「こぼれた鈴の芽が出て」「私の心に光る水色」などと、探せばいくらでも面白いフレーズが見つかります。

 そんな風に、言葉を操る様は奔放です。内容は意外と当たり前の等身大の心情を書いているので、その比喩、言葉遣いにはドキッとします。
 曲は何人もの人が書いているのですが、彼女の歌と演奏したものを聞くと、見事に「彼女の曲」になっているのは、彼女の歌手としての力と同時に、その歌詞の持つ個性の強さがあるからでしょう。
 そう言えば、「情熱」は別として、UAの曲って意外と歌われていないような気がします。カラオケなんかでも、あまり聞いたことがないのは、その独自な雰囲気ゆえに、他の人には歌いにくいのかも…。

 今、レンタル店通いをしている私が、はやく店頭に並ばないかと待っているのは、彼女がJAZZを歌っているアルバムです。
 何曲かラジオで聴きましたが、歌が上手いゆえに、苦も無く(?)歌っている歌声は、なかなか堂々としています。


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FINE FEATHERS MAKE FINE BIRDS
(2枚組) 発売1997年4月
総合評価 五段階です 
太陽手に月は心の両手に
大きな木に甘えて
I FEEL THE EARTH MOVE
SWEET VIBRATIONS
ゼリー
BECAUSE THE NIGHT
電話をするよ
温度
リズム
情熱
MAMA
SOMEBODY TO LOVE
雲がちぎれる時
水色
HORIZON
HARLEM BLUES